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9月20-21日開催の『フランス映画の秘宝』では、1940年代の貴重な映画も上映されます。それらの古い映画を守り映画の歴史を支えているのは、メディアテークとも似た名前の「シネマテーク」あるいは「フィルム・アーカイブ」と呼ばれる機関。では、シネマテークとはどんなところなのでしょうか? 今回は、日本のシネマテークである東京国立近代美術館フィルムセンターの主任研究員・岡田秀則氏をスタジオにお迎えします。映画の収集・保存のほか、上映企画や教育事業も手がけてきた氏に、世界のシネマテークの歴史・現状と、シネマテーク/フィルム・アーカイブのこれからについてお話しいただきます。

ゲストプロフィール

岡田秀則(おかだ ひでのり)
1968年、愛知県生まれ。東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員として、これまで映画フィルムや関連資料の収集・保存・公開や、上映企画・イベントの運営、映画教育事業などに携わる。日本のドキュメンタリー映画史、物質としての映画史、映画アーカイブ論を専門分野と称するが、むしろ映画の“雑食性”を好み、映画の歴史を踏まえたさまざまな執筆活動や上映活動に関わっている。共著に『映画と「大東亜共栄圏」』(森話社、2004年)、『ドキュメンタリー映画は語る』(未來社、2006年)など。2005年より「中央公論」誌の新作映画紹介欄を担当。明治学院大学文学部非常勤講師。

レポート

仙台を訪れるのは今回で3度目になるという岡田秀則氏は、せんだいメディアテークを「居心地がいい」と語られ、メディアテークという名前にも含まれている「テーク」という言葉の意味についてのお話から今回のレクチャーを始められた。「テーク」とはフランス語で「何かを収める所」という意味であることから、シネマテークとはすなわち映画の保存場所であることが説明された。そこでは映画素材の収集・分類・保存が厳密に行われ、フィルムのアーカイブにおいて重要な役割を果たしていることが述べられた。

レポート写真 次に、フィルムアーカイブ運動の先駆者で、シネマテーク・フランセーズの創設者、アンリ・ラングロワ氏について熱く語られた。ラングロワは主に上映運動に力を入れたが、その後の歴史から、岡田氏は、映画の保存・カタログ化・資料の収集・上映のプログラミングという4つをいかにして関連させていくかが大切であり、フィルムアーカイブが果たすべき役割を示した。

レクチャーではいくつかの映像資料も紹介された。ヨーロッパで作成されたトラベローグ(観光)映画がスクリーンに流れると、聴講者の中には身を乗り出して映像に見入る方々も見られた。トラベローグ映画とは、簡単に旅行に行けない20世紀初頭の観客たちに旅行気分を味わってもらうために作られた映画であり、「ここに映画の持つ役割の複数性が見られ、そこにまた楽しみが見出せる」と岡田氏は語られた。次に、生演奏と活弁を加えた上映方法が紹介され、そこにフィルムアーカイブならではの上映形態が見出せることを示唆された。

レポート写真 「シネマテークの仕事はどんどんと広がってゆきます」と岡田氏。保存技術や著作権の知識、映画論、映画史だけではない一般の歴史についても見識を深めなければならないと話され、更に今後シネマテークのキーワードになるふたつの事柄について話をされた。ひとつはデジタル技術に対する見解。デジタル技術の便利性、そして「映像の出口」としての役割は認めるが、映画の保存技術としては未成熟であることを主張した。フィルムに比べ画質が劣っていること、変化の早いデジタル技術のことを理由として挙げ、最終的な保存媒体としてふさわしい新たな技術の必要性を語られた。もうひとつのキーワードとしては教育を挙げ、すぐれた映画を次世代に受け継いでいく姿勢の重要性について説かれた。

レポート写真 「私たちフィルムアーキヴィストは、映画の作品名を取り上げなくても際限なく映画の話ができる変な人たちなんです。」そう笑いながらも、岡田氏の表情からはフィルムアーカイブの活動に誇りと楽しみを見出していることがうかがえた。質疑応答の場面でも、シネマテークのさらなる拡充と発展を願う声が聴講者からも多く上がり、岡田氏に大きな拍手が送られた。

森脇あや(宮城大学事業構想学部事業計画学科2年/smtインターンシップ生)