●発端は「米国高齢社会調査団」の見聞でした。 平成7年4月、仙台市内で活動するNPO(民間非営利団体)のリーダーや研究者らで構成する「米国高齢社会調査団」の一行が米国のカリフォルニア州、マイアミ州、ウィスコンシン州を回り、米国の高齢者の生活や高齢化に関する仕組みを調査しました。 そこにはは高齢者が自立的に、自分の意思で暮らすための社会的な仕組みがさまざまに存在していました。特に「シニアセンター」という、全米規模の仕組みは、経済格差が激しく、犯罪や少年非行など、重大な社会問題に悩む米国の高齢社会において、NPOー市民ー政府・行政ー企業が有機的に結び付く仕掛けになっているように見えました。 ●日本の高齢化を規定している4つの要素 (1)もともと日本では、高齢者を社会的に用済みの存在と考えてきました。 (2)現実の高齢世代は感性も知識も豊富で、おまけに社会経済的にみればお金もあり、社会的な役割を果たす意欲も時間もあります。 (3)にもかかわらず、高齢世代が社会的な役割を見出す、有効な仕掛けが存在しません。特に行政の取り組みは、人の助けを必要とする高齢者への施策が中心で、「弱者としての高齢者観」を乗り越える新しい発想・仕組みが必要です。 (4)行政主導でつくった仕掛け(老人クラブ、老人憩いの家、○○センターなど)があるが、現代の高齢者の意識やライフスタイルとのギャップが大きいため十分には機能していません。 ●問題はあるが、それでも… 米国の「シニアセンターシステム」はそれ自体、問題をいろいろ抱えています。完全なシステムとは言えませんが、それでも「NPO」「市民ボランティア」を機能している社会システムとして注目すべきものがあります。 政府・行政はずっと後ろの方で支える関係です。米国の社会全体が日本に比べれば、そんな構造になっていることも忘れてはなりません。 シニアセンターでは運営やボランティア・自主活動などの面で、高齢世代がさまざまな役割を果たし、チャンスをつかむ機会となっています。 シニアセンター運営の中心となるNPOは、地域の高齢者が生活の中で本当のところ何に困っているのか、何に悩んでいるのかを把握し、必要な手だてを政府・行政や市民、企業に訴える機能を有します。 シニアセンターは食事サービスやさまざまな相談事業を通じて、支援を待つ高齢者に対する支援活動の、最も重要な拠点です。高齢者への支援活動に高齢者自身が参加するチャンスも、米国社会のボランティア風土とシニアセンターという仕掛けが一緒になって、初めて機能しているように見えます。 ●米国の物まねではないものを 日本の社会に合った「シニアセンター」を実現したいー。それが私たちの願いであり、3年以上にわたって研究・実験を繰り返してきた理由です。 |