自明を問い直す

お早うございます。初めまして。
 アテンドをさせていただいている山川秀樹です。京都から来て、今日で仙台滞
在七日目の朝を迎えています。

 当初はすべてが初めてで何かとたいへんでしたが、アテンド四日目の後半ぐら
いからはかなりアテンドすることにも慣れて、お客さんとお互いの感性や気づき
を、分かち合うことができてきているようにも思われます。
 ぼくなんかにとっては、事物に触るということは、極当たり前の日常的な営み
であり、いわばあえて問うことのない「自明」の事柄のように認識してきました。
また、ほぼ生まれたころから見るという営みには無縁なぼくには、見える世界は
いわば未知のゾーンなわけです。

 ところが、お客様の中には、最初は目に入った事物や画像の様子を口にしたり、
各々の作品の前で立ち止まってその作品を見つめたりはするものの、なかなか触
ったり手に取ったりなさらない方がままいらっしゃいます。けれども、ぼくが作
品に触れて、その手触りから思い出す体験や過去に触った事物について語ったり、
説明を受けた画像から妄想する作品についての物語を語ったりすると、そうした
お客様が作品に積極的に触り始めたり、自らのことばや態度でその作品に触れて
みて感じたり気づいたりしたことを表現するようになる、そんなシーンがまま見
受けられるように思います。

 お客様の多くにとって「触る」という営みは、決して日常的な営みでも「自明」
の事柄でもないのだ、ということに改めて気づかされるここ数日です。そして、
お互いの感じたり気づいたりしたことをシェアーする作業を通して、ぼくもお客
様も、その自らの「自明の感覚世界」から、ほんの少しずつ解放されていってい
るのかもしれません。
 そして、そうした共同作業の積み重ねの延長線上に、自らの自明の世界を問い
直したり捉え返したりしつつ、新たな共生のための地平を育む地歩が創造される
ことを祈念して、後半のアテンドの期間を勤めたいと考えています。
 まだいらしていないみなさん、ぜひお越しくださり、ごいっしょに楽しいひと
ときを過ごしましょう。
 それではまた。

お花のコサージュを付けたアテンド・山川氏。

お花のコサージュを付けたアテンド・山川氏。

コメント / トラックバック 7 件

  1. urai より:

    12月15日の19:10からの回でお世話になった者です。
    とても楽しいアテンドをありがとうございました!

  2. イオ より:

    12月16日に作品を拝見した者です。シュールでビビットなテーマと色遣いに笑ったりこわくなったりしました。有料ゾーンでは(お名前を忘れましたが)視覚障害をお持ちのガイドの方と、もう一人の参加者の方と三人で「高校の放課後みたいですね」って、とてもうちとけて楽しかったです。

  3. admin より:

     uraiさん、こちらこそありがとうございました。楽しいひとときでした。また、どこかでお会いしましょう。
     昨夜すべてのアテンドシフトを終了しました。自明性の問い直しと、自らの「ありのまま性」の再発見、そして、その「ありのまま」性を突き出して生きることの重要性、そうしたことについて深く考えたり再認識したりできる貴重な機会となりました。
     来てくださったお客様、お世話になったsmtスタッフのみなさん、アテンドスタッフのみなさん本当にありがとうございました。今日の午後千台を離れ、少し東京に立ち寄った後、明日の朝には関西に戻ります。この大きな休息の世界から、なかなか希望が見出しにくい関西の地でのぼくの日常世界にちゃんと戻れるかまだ不安ですが、希望の種を育むべくぼちぼち歩んでいきます。
     何かあれば何時でもお気軽に声をかけてください。またぜひお会いしましょう。

  4. hira より:

    16日の午後に横浜より伺った者です。山川さん、アテンド終了お疲れさまでした。
    ツアー直後は、体験した感覚をなかなかうまく言葉にできませんでしたが、反芻をしつつ帰宅しました。
    その中で思ったことのひとつは「豊かさ」ということでした。普段僕らが思っているよりももっと、感覚も世界も豊かなのではないかと。自明性などが枷となり、多くの豊かさを取りこぼしてしまっているのでは、と思いました。廃材で豊かさに気付くというのも、なんとも興味深い所です。
    他にも、自己と他者、認識やコミュニケーション、思い、記憶、祈り、希望についてなど、思う所は色々とありますが、書き連ねるとキリがないのでこの辺りで。日々の暮らしの中でまた考えを深めていきたいと思います。
    山川さん、スタッフの皆さん、そして高嶺さん、貴重な体験をありがとうございました。

  5. 山川秀樹 より:

     hiraさん、遠くからお越しいただきありがとうございました。楽しんでくださったようでよかったです。
     そうですね。自明性というのはときとして大きな枷になることがあるように感じています。見えること、視覚をフルに活用することという、いわば自明の感覚世界に、たの豊かな感覚世界が社団あるいは阻害されているということはままあり得るかもしれませんね。
     そうしたことは何も感覚世界やこうした美術の鑑賞の場面に留まらず、ぼくらが暮らすこの日本の社会のいたるところに、あるいはぼくらの日常の営みの中に、いくらでも存在するかもしれません。
     だからこそ自明性の問い直しや普段の捉え返しが、より深くて豊かな生の営みや、社会の創造の、重要な糸口となるように感じた今回の展覧会でした。

  6. 7号倉庫 より:

    こんばんは。
    16日の2時ごろにひとりで参加した、三重県出身のおばちゃんです。
    案内、ありがとうございました。
    楽しかったです。

    やっぱり、触るよりなにより、わたしは、先に目で見てしまう感じでしたね。

    そして、いつもひとりでアート作品を観ているように、作品を観ている自分に気がついたりしました。

    最後に、大竹さんの住んでいた家だったのだと知り、あーなるほどと思いました。

    それを知る前は、自分勝手に作品を解釈していました。

    なかなか面白い経験だったけど、作品の印象より、山川さんの印象の方が強く残りました。

  7. admin より:

     7号倉庫さん、お早うございます。ご来場ありがとうございました。楽しんでいただけたようでよかったです。
     はい、7号倉庫さんも、とてもインパクトのある方だったので、よく覚えていますよ。
     従来の見るあるいは一人でと言う鑑賞方法では感じたり気づいたりできないであろう、全く未知の世界に、少し足を踏み入れられ始めたのかもしれませんね。これから新たな鑑賞のスタイルを育んでいきたいですよね。
     これからもよろしく。