September 08, 2003

返信

下の原田さんからのメールへの庄子の返信です、


はせべりゅうけい先生について、興味深いお話をありがとうございます。

長谷川りゅうほう先生の遺品は是非一度拝見したいです。
今度また訪ねる機会がありましたら、是非誘ってください。
はせべりゅうけい先生の作品も是非いちど拝見したいものです。


さて、私の方で少し気になった点をいくつか。


まず感想としては、なんでもかんでもアーカイブ、という状況になってきたな、ということです。

きっと今後、smtのまわりで何かをアーカイブにしたい、というお話はごろごろ出てくると思っているのですが、そしていま実際いくつかのお話をちらちら耳にはしていましたが、

従来、デジタル、でなくアーカイブをおこなう場合は、物理的な収蔵スペースや管理の問題があって、物を収蔵する、ことを軽々しくできる状況ではなかったわけです。
(実際自分の部屋でも同じことですが、何か物を増やしたら何かは捨てなければいけない、取捨選択をしなければいけない、、)

で、状況がデジタルアーカイブということになったとき、そういう物理的な制限があってできなかったことができるようになる、なんでもアーカイブにできる、という状況も生まれると思うのです。
(収納スペースが広がったから物をとっておけるという発想、)

で、例えば、そういった雑多な情報もピンからキリまでとっておいて、そういった情報のプラットフォームとしての機能をsmtがはたす、という発想は、あると思うのです。情報ががあっとあってデータベースになっていて検索できる画面がある、というシステム。コンテンツづくりは、外部の人たちががしがしやって、完成度がどうこうという話はしないで、smtはのっけるだけ、というような。

それとは別に、smtがある程度主体的にアーカイブづくりに取り組む、という発想があると思います。smtが提供すべきコンテンツを自館でつくっていって提供する。展示のデジタル版というような。どの主題を、どの切り口で扱うのかについての取捨選択が行われるような仕組み。この場合、基準づくりがまず行われる必要があると思いますが、でももちろん、smtの事業がある意味基準がないような現状で、アーカイブ事業のみに基準を設けるのはむずかしいのでしょうね。

そういう、館の方針もまだできていない状況で、テストケースとはいえフライングでプロジェクトをはじめている不安というのをすごく感じています。館のお金を使っていることですし。ただ当初は、上の話をからめつつ、進めよう、というお話だったはず。このへん、本当にきちんと議論していかないと、江川のプロジェクトでたとえなんらかの成果物ができても、できたものが全体の中でちゅうぶらりんでは、庄子としてもとても心苦しいのです。そのあたり、笹木さん、いかがでしょう。

なので、江川のプロジェクトでさえこころもとない今、めったやたらにアーカイブというくくりでほかのことに手を出すのはちょっと躊躇してしまいます。長谷川りゅうほう先生の遺品に関しては、物がどんなものかまず、見てみていろいろ考えたいです、原田さん。なにせ個人のコレクションですから。。もしかしたら、物によってはsmtではなくほかの館の守備範囲かもしれませんし。



先日、江川活字を訪れた際にあらためて感じたのは、あの、場所に、私は何か感じるものがあるのだなあ、ということです。江川活字のあの空間に私は個人のお店ながら、パブリックな何かを感じているから。文字が人間をつくってきた、読むという行為は人間をある意味人間にしている、それを支えてきたのが印刷文化だとして、それを、直感的に理解できるのがあの空間だと思っているのです。自分が人間にしている文字を読むという日々の営みを支えていた空間。DTPでは、あれほど直感的にわかる、ということを経験できないと思う。。ほんとうに、そこの部分が一番伝えたいことなのですが。。。

というより、そこのところがいえないと、(人間と、メディアとのつながり、という部分、)あまりsmtでやる意味がないとおもうのです。ただ、個人の古いお店を取材する、というだけでは。。そんなものは仙台にいーっぱいあるわけですから。。。


もともと、江川活字がなくなってしまって、貴重な物品を保存しておきたいという小泉先生的な発想からスタートした、このプロジェクト、と思われているかもしれませんが、私はこれらが、それぞれ物品として貴重だ、という意識はあまりありません。
(もちろん、江川活字の方々が考えているように、これがどこかの博物館やらに収蔵されれば、それはそれで幸せな結末と思うのですが、だってそれが済谷川さんご一家が望んでいることだから)


だから、聞き取り、というのもそれが目的なのではなく、その結果、江川活字のパブリックな側面が描きだせればなあ、と思っているのですが、すごく遠回りをしている感覚があります。もっといい方法があるのかもしれない。


日々、そんなことを考えています。難しいですね。。。

Posted by wadm at September 8, 2003 12:43 AM
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